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それぞれの禁煙エレジー

探偵ハリーの半分ハードボイルドな日常 Part2
TOP探偵ハリーの半分ハードボイルドな日常 Part2

流れ

流れ

佐伯ハート&マインド研究所からどうやって帰ってきたか、正直よく覚えていない。
気が付いたら俺は事務所の椅子に座っていた。

それから3日間は、俺は毎日夢を見た。

研究所へ行った日の夢は、今まで俺を悩ませていたのとは違っていた。

...夢の中で高校生になっている俺は、どこかに修学旅行に来ている。
バスから降りて靴を脱いで何かの建物に入った後、戻ってくると靴が無くなっていることに気付く。仕方なく誰かの靴をこっそり履くのだが、しばらくして誰か見知らぬ高校生にに呼び止められ、靴を取っただろうと詰問されるのだ。
見ると、そいつも靴を誰かに取られて、やはり違う誰かの靴を履いているのだが、そうやって最後に残った女子高生が、自分の靴がないと泣いているのだ。
その高校生は、良く見ると、分かれた元妻の珠代なのだ。

夢から覚めて、やれやれ、ひょっとしたら、例の悪夢ともおさらばできたのかと内心期待したが、次の日の夢はいつものあの夢だった。

...夢の中で俺はまた5歳くらいの子供になっていて、乾いた土の上に横になっている。体を起こそうと四つんばいになると、どこからともなく、誰かの怒った声がする。
その声はだんだん大きく、そして怒っている人もどんどん増えて、最後には何千何万の人々が各々周りで怒声を上げるのだ。

ただ、いつもと違い、夢の中で俺は勇気を絞って、怒鳴っている人の顔を見た。
その顔は、何故か俺の顔なのだ。しかも何千何万の顔全てが俺の顔をしているのだ。

そして3日目の夢は、まるで2日目の夢の続きのようだった。

...何千何万の俺の顔をした人々が口々に怒声を上げる中、驚いた俺が今度は周りを見ると、俺と同じくらいの背格好の子供が俺の周りで何十人も倒れているのだ。
俺は助けようと抱き起こしその子の顔を見ようとしたところで...目が覚めた。

顔を見たのかもしれないが、全く思い出せなかった。

はっきり言ってどれも皆悪夢の部類に入る夢ばかりだったが、研究所で礼子のカウンセリングを受けてからは、気力が少し戻ってきたようだった。
俺は礼子との約束の時間に間に合うように、少し早めに事務所を出て、佐伯ハート&マインド研究所へと向かった。

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