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探偵ハリーの半分ハードボイルドな日常
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探偵ハリーの半分ハードボイルドな日常

俺の名はハリー

俺の名はハリー。と言っても生粋の日本人だ。誰がつけたのか覚えていないが、皆俺の事をそう呼ぶ。

子供の頃、母親に「急いで!(Hurry up!)」とせかされていたからだとか、ハリー・ポッターのハリーだとか、いろんな説があるが、まぁそんなことはどうでもいい。
この町では、俺の本名より、このハリーという呼び名のほうがはるかに知られているし、大事なことは俺もこのこの名が気に入っているということだ。

10年ほど前から、この町で探偵事務所を開いている。
かっこよく言えば社長なわけだが、社員が一人もいないから、一人でなんでもこなす。
始めたばかりの頃は、食うや食わずの状態で、アルバイトでつないだりしていた。
何度もたたもうか、と思うような時期があったが、不思議とそんな時に限って大きな仕事が舞い込んだりして、首の皮一枚でつながった。
最近、やっと名が知れたのか、仕事の評判を聞いて舞い込んでくる依頼もポツポツ出てきて、まぁなんとかやっている。

探偵というと、松田優作の「探偵物語」を思い浮かべる人も多いが、俺はなんといってもハンフリー・ボガート、だ。
困難に立ち向かう強靭な精神力と肉体、そして酒と煙草を愛し女を守る孤高の姿は、軟弱な今の時代にこそ必要な生き方だ。

とはいえ、現実はそう簡単ではない。映画のように、やれ殺人だ、ヤクの密売取引だ、といった派手な仕事は皆無といっていい。
いま一番多いのは、正直浮気調査。依頼の半分近くを占めている。

男女の修羅場に対面することも少なからず、ある。そんな時は正直、心が萎えそうになるが、酒と煙草が救ってくれる。
うまい酒を飲み、煙草をくゆらせていれば、嫌な事も忘れる。

何より、ハードボイルド的な生き方が、俺の生きる活力なのだ。

俺の名はハリー。探偵。ハードボイルドが似合う男...

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