俺の名はハリー。探偵。ハードボイルドが似合う男...
「山本さん!」
誰だ、俺を本名で呼ぶヤツは?
寝ているところを起こされ少々不機嫌になった俺は、声の主がアパートの大家だと気付いて慌ててドアを開けた。
「もう家賃、3ヶ月も溜まってますよ。今日こそは払ってもらいますからね!」
何とか月末まで待ってほしいと懇願すると、大家は一瞬にやりと笑い、条件を出してきた。
週末に子供を映画に連れて行く予定が、急に別件で出かけなくちゃならなくなったので、その間子供の面倒をみてくれというのだ。
俺は、子供が苦手だ。うるさいし、わがままだし、礼儀を知らない。面倒くさいのだ。第一ハードボイルドな俺に似合わない。
...とはいえ断れる状況にもなく、不承不承ながらも了承した。
大家の子供というのは、生意気盛りの小学3年生。わがまま三昧に育てられたのか礼儀を知らない。
「よろしくな。山本!」
っていきなり呼び捨てかい。せめてハリーさんか山本さんて呼べよ!
「じゃあ、頼みましたよ。」
子供を俺に預けた大家は、そそくさと部屋を出て行った。
部屋に俺と子供の二人が取り残されたところで、ややあってから子供が切り出した。
「じゃあさっそくいこうか!」
ってどこですか?
「ナルトだよ!今映画館でやってるんだよ。おじさん何にも知らないんだね。」
まだ恐れを知らぬ瞳でじっと見つめられると、なんだか自分がすごい愚かな気がしてくるから不思議だ。
なんか調子狂うな...
休みの日の映画館は混雑していて、家族連れで賑わっている。
売店でポップコーンと、俺はビールを買った。それから、入る前に喫煙所で2本、立て続けに、吸う。
映画は好きだが、ヤニ中の俺にとっては、2時間は、結構苦痛だ。ましてや子供向けのアニメをみるのは相当の忍耐を要することになるだろう。
2時間後...俺は赤く腫らした目で喫煙所に呆然と立っていた。ナルト...ファンになっちまいそうだ。
「山本、泣いてるん?」
心配そうに覗き込む大家の子供に、俺はかぶりを振って、タバコの煙が目にしみただけだと言い訳した。
俺の名はハリー。探偵。ハードボイルドが似合う男、だってばよ!(只今忍者修行中)


